シリコーンに代表される有機ケイ素材料は、耐熱性、耐候性、耐光性、高光透過性、耐寒性、離型性等の様々な優れた特性を有しており、他の材料では代替できない材料として極めて広範な分野において利用されています。シリコーンの基本骨格を形成するケイ素および酸素は、地表上に存在する元素のうち最も多量に存在する元素(第1位:酸素(46%)、第2位:ケイ素(27%))であり、岩石や砂(二酸化ケイ素や金属ケイ酸塩)としてどこにでも存在し容易に入手可能です。そのように極めて入手容易で安価な元素を主要構成成分としながら、有機材料が世界で年産2億トンを越えるのに対し、有機ケイ素材料の生産量はその 1/100 にも満たないのが現状です。その大きな要因として、(1)有機ケイ素原料の製造は、原料のケイ石(SiO2)を電気アーク炉で炭素により溶融還元し、一旦単体のケイ素(金属ケイ素、Si)へと変換し、その後塩化メチル等の有機成分と反応させるプロセスを経るため、高エネルギー消費で高コストである、(2)有機材料に比べ、触媒技術の開発が大きく遅れており、有機ケイ素材料の性能向上、新機能発現、コストダウンに大きな余地を残している、の2点が挙げられます。
そこで、本研究開発では、以下の2つの研究課題に取り組むことにより、有機ケイ素材料の性能向上、新機能発現とともにコストダウンを達成し、エネルギー関連部材・電子機器用部材をはじめとする高性能・高機能部材開発を通して、有機ケイ素部材の市場拡大に繋がる基盤技術の開発を行います。
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- ① 砂からの有機ケイ素原料製造プロセス技術開発
- ② 有機ケイ素原料からの高機能有機ケイ素部材製造プロセス技術開発
主要研究成果
早稲田大学(②-2 ケイ素-酸素結合形成技術)
ポリオルガノシロキサンは有機基の種類や配列によって精密な物性制御が可能です。早稲田大学黒田一幸教授、下嶋敦教授らのグループは、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構「有機ケイ素機能性化学品製造プロセス技術開発」 の一環として、2種類の有機基が対称的に配列した鎖状オリゴシロキサンをルイス酸触媒下で重縮合させることで、規則構造ポリオルガノシロキサンを合成する技術を確立しました。対称的なオリゴシロキサンを用いることで、副反応である官能基交換反応による配列の乱れが起こらず、有機基の高度な配列制御に成功しています。
本技術にご興味のある方は、早稲田大学・下嶋敦教授までご連絡ください。研究室のホームページはこちら。